橘廉太郎と弦次郎は年子で同じ学年の高校一年。二人は子どもの頃習っていたバイオリンのせいで、仲がぎくしゃくしてしまっていた。バイオリンを愛する弟より兄のほうがコンクールの成績が良かったからだ。 弟の気持ちを感じバイオリンをやめた兄はその後淡々とした学校生活を送っていたが、ある日スパニッシュギターに出会い初めて心を動かされる。兄はギター、弟はバイオリン。『ビートキッズ』の風野潮氏による、音楽青春小説。
僕は、兄が苦手だ。
イヤな奴だからとか、いじめられてるからってわけじゃない。
迷惑かけられてるわけでもないし、一緒にいて恥ずかしいような容姿でもない。
むしろ、その逆。
兄の廉太郎はイイ奴だし、クラスの女子に写真見せたら一二〇パーセント「紹介してっ!」って頼まれるレベルの美形。おまけに背も高い。
性格は、のんびりしててやさしくて、たぶん僕が頼めば、自殺する以外のことならなんでもやってくれるんじゃないかと思うくらいの弟思い。
いや、もしかしたら「死んで」って言っても「別にええよ」って言いそうで怖いくらいで。
だから、冗談でも「死ね」とか言えないんだよな。
ああ、そっか。たぶん、そういうところがイヤでイヤでたまらないんだと思う。──本文より。
橘廉太郎と弦次郎は年子で同じ学年の高校一年。
もともと仲が良い兄弟だったはずの二人だが、
子どもの頃に二人で一緒に習っていたバイオリンのせいで、
少し仲がぎくしゃくしてしまっていた。
バイオリンとクラシック音楽を心から愛する弟の弦次郎よりも
何でも軽くこなせてしまう兄の廉太郎のほうがコンクールの成績が良かったからだ。
弦次郎の気持ちを感じで早々にバイオリンをやめた廉太郎は、その後も特に何にも熱くなれるものがなく、モデルのバイトをしてみたり、祖父の経営する病院をつぐために医者になるべく淡々とした学校生活を送っていた。
そんな廉太郎はある日、スパニッシュギターに出会い、初めて心を動かされる自分に気がつく。
兄はギター、弟はバイオリン。
『ビートキッズ』の風野潮氏による、少年たちの音楽青春エンターテイメント小説。