そもそもローマ人は粗食で、ギリシャ人から「お粥すすり」と蔑まされていた。しかし国力増大にともなって、ガストロノミー(美食主義)が花開く。その最たる美食家が、紀元14年2代目皇帝ティベリウスの治世に生きた大貴族アピキウスだった。彼は、あらゆる食材でさまざまなレシピを残していった。雌豚の外陰は、ふすまのなかでころがし塩水に漬けてから調理する。オオヤマネは詰め物をしてローストに。フラミンゴは皮をはいで洗い、形をととのえて…。そのほか、揚げ菓子やフレンチトーストのようなデザート、多くのソース、そして謎の調味料ガルムや幻の植物シルフィウム。美味、珍味を追究したアピキウスの料理書から、古代ローマ人の逸楽の跡を辿る。