僕はお金欲しさに小説書いてるんじゃない!
「作家はいざパソコンを前にキーボードを打ちはじめると──いったん物を書く現場の時間の流れに入ってしまうと──原稿料のことなど忘れてしまいます。自分が書いている原稿を、より良いもの、より読ませるものにするために頭を使います。エッセイでも書評でもそして小説でも、何でもおなじです。
読まれ方はどうあれ、書くほうは、何を書くにも絶対に力を抜いたりはしないんです。そうしないと物を書く張り合いがないからです。力を抜いたりすると、抜いたとたんに、物を書くことに何の面白みも見出せなくなるからです」(本文より)
20年ぶりに長編小説の書き下ろしを始めた作家。
連載ではなく、「書いても書いても原稿料を貰えない」現場では、自身の台所事情とは別に、「小説を書くこと」について、いろいろと思うところも――。
最新作『月の満ち欠け』の執筆開始から第一稿完成までとまったく同じ時期、小説名人・佐藤正午が語っていた、「小説を書くこと」についてのすべて。