阿修羅像など天平仏の粋と正倉院宝物
平城京を舞台に、聖武天皇(在位729~747年)の下で開花した天平美術。彫刻においては、東大寺・不空羂索観音菩薩立像、興福寺・阿修羅像、唐招提寺・鑑真和上坐像などに代表される乾漆造をはじめとする高度な技術により優美で精神性の高い作例が数多く生み出されました。絵画は現存する作例は少ないものの、盛唐絵画の緻密な構成、濃密な彩色を豊かに受け継いでいます。さらに工芸では、螺鈿紫檀五絃琵琶や鳥毛立女屏風など正倉院宝物に代表される、優れた招来品の数々とシルクロードを経て伝わった技術に基づく国産の名品があります。本巻では、東大寺・法華堂や唐招提寺・金堂など近年の修復・科学調査の成果や、東大寺・盧舎那仏(大仏)建立にまつわる華厳経および新羅の思想的・造形的影響などアジア的な視点も踏まえ、天平美術の名品を網羅するとともにその全貌を概観します。