東西文化が強烈に響き合う、激動期の美術!
江戸時代、独自の文化を成熟させてきた日本。開国とともに西洋から強烈な刺激が押し寄せる。油絵や写真技術などがもたらされ、横浜や長崎などの外国人居留地からその技術が全国へひろめられた。明治維新後には、お雇い外国人による教育を受けるものも出てくる。「美術」という言葉がつくられ、教育制度が整えられていった。また、欧米諸国で開催される万国博覧会へ出品するために、国をあげて美術の興隆がはかられた。長崎を介して鎖国中にも取り入れられていた南画や洋風画、それに伝統的絵画のやまと絵、浮世絵、さまざまな職人芸にもその影響がおよぶ。高橋由一・五姓田芳柳・原田直次郎らの油絵、伝統的日本画の系譜をひく冷泉為恭・塩川文麟・狩野芳崖らの作品、月岡芳年、河鍋暁斎、小林清親らの浮世絵や版画作品、またとくに重点をおいた工芸の分野では、柴田是真、白山松哉、旭玉山らの超絶技巧の数々、あわせて180点あまり掲載しました。
【編集担当からのおすすめ情報】
従来の美術の範疇にとらわれない、さまざまな作品を取り上げました。とくに工芸作品は宮内庁三の丸尚蔵館や東京藝術大学の所蔵品を中心に、これまでの美術全集にない数を掲載しています。また、高橋由一、河鍋暁斎、柴田是真、狩野芳崖らは複数の作品を取り上げ、狩野一信は「五百羅漢図」を全図掲載しました。幕末の開国から明治維新を経て、東京美術学校が開設されるまでの、“激動期”の美術を堪能できる1冊です。