"漂えど沈まず"-男は新しい作品の題を原稿用紙に書きつけた。しかし、恩寵はそれきり訪れず、男り焦燥にあぶりたてられるように女たちのもとに逃れる。男は女の肉体の彼方に、酷熱の戦場や、この世ならぬ静謐に満ちた古代の光景があらわれるのを見た…。地獄の諸相を体験した男の孤独と魂の救済を描く未完の遺作長編。短編「一日」を併録。