芥川龍之介には三人の息子がいた。長男・比呂志は俳優として、三男・也寸志は作曲家として名高い。だが次男の多加志は…おそらくほとんどの人が知らない。三兄弟の真ん中に生まれた多加志は、幼い頃身体が丈夫ではなく、内気な面もあった。そんな彼が、秘めた決意と共に加わった同人誌が「星座」である。詩や翻訳、小説を発表すると共に、装幀や挿画なども手がけ、短いながらも才能の片鱗を煌めかせた日々であった。しかし、運命は、終戦間際、二十一歳の彼を一兵卒として、激戦の地ビルマへと送る。多加志がヤメセンの戦いに散ったその日、田端の芥川家も空襲で全焼した…。戦後六十年、多加志が名付け親である幻の肉筆同人誌「星座」の行方を求め、著者の東奔西走が始まる-。たった一編だけ遺された小説「四人」に込められた父・龍之介への誓いとは、果たして何だったか。