奈良盆地の小さな村"小森"。そこに住む人々は、いわれのない差別の壁に囲まれ、貧しさに苦しみながらもなお愛を失わず、明るく真摯に生きていた。日露戦争で父を失った誠太郎と孝二の幼い兄弟は、母と祖母の温かい手に守られて、素直に、感受性豊かに成長する。しかし、小学校に通いはじめる頃、彼らは、自分たちを包む、暗い不安な環境に気づきはじめる。級友たちの針のような侮蔑の言葉、そして、無言の圧迫…。それは、生涯にわたる闘いの幕開けだった-。"部落"の歴史にメスを入れ、人間の尊さを謳いあげる不朽の名作。