天才三島の生涯と文学にこれほど激しく斬り込んだ評伝がほかに書かれただろうか。絢爛たる言葉の王国を構築した作家としての三島。肉体への執着を露わにし、武士道を称揚し、余人には理解できない最期を選んだ行動の人三島。二つの貌の隔たりは大きく、空隙は容易に埋めることができない。J・ネイスンは"死へろエロティックな渇仰"の視点から、神話と誤解に塗り固められた三島像を打ち砕くべく鑿を揮う。