会社生活と文学を両立させてきて四十年。定年を控えた修吾が仄かに惹かれる同世代の従妹は、娘を乳癌で失う苦境に陥っている。その彼の前に現れたのは、夭折した先輩作家の初恋の女性だった…。ドイツ中都市と日本の美しい四季を背景に、自立をめざした二人の女性に導かれるように、主人公は、過去の部屋に入る。一枚のタペストリイのように繊細で甘美な感情を織りなす長篇小説。