時代を越えてフィリピン史に通底しているのは、民族抵抗の精神である。それがフィリピン人意識として浮上してこなかったのは、政治と教会がそれを押しつぶし、覆いかくしてきたからである。これまでのフィリピン史はこの精神の連続した存在に十分な評価を与えてこなかった。スペインの武装宣教船団来航後の長い植民地時代を通じて、西欧と闘い続けたアジア唯一の戦闘的民族の軌跡に、本書は肯定的な光を当てるものである。