経済の発展期には美徳とされた勤勉の価値が豊かさの到来とともに揺らいでいる。よく働くことは余暇や家庭や地域の生活と相反する生き方になってしまった。勤勉な労働よりも、意味ある労働が求められるようになる。だが、勤勉倫理に代わる新しい仕事倫理は生まれるのだろうか。仕事をめぐる過去の思索を訪ね歩き、「良い仕事」の思想の伝統の中に、現代の自己実現願望の限界を超える新しい仕事倫理・仕事理念の可能性を見出す。