ナチスが残した負の遺産を抱える戦後ドイツは、フランスやポーランドとの間で、歴史教科書の記述をめぐる対話を続けてきた。その営みは冷戦下いかなる成果を生み、ヨーロッパ統合の潮流のなかでいかなる発展をみせたのか。ともすれば理想視されがちな「大いなる試み」を、その限界すら見据えつつ丹念に検証し、歴史教育をナショナリズムから解放する方途をさぐる。日本とアジア諸国との教科書改訂問題にも資するところ大きい考察。