微積分をベクトル空間へと発展させたベクトル解析は力学、電磁気学、流体力学などにとって欠かせない方法論であるとともに、その概念は微分幾何学やトポロジーと自然に結びつく。本書は東京大学工学部で数学の講義を担当した執筆者たちによって、そのベクトル解析について主に場とそれらを関連づける微分演算子や、重要な積分定理を解説した一冊である。第1章で基盤となるベクトル空間について確認した後、第2章でスカラー場、ベクトル場、テンソル場を解説する。第3章では導入としてベクトル関数を見た後、第4章で微分演算子である勾配、発散、回転について述べる。第5章では線積分、面積分について直観的な定義で述べた後で厳密に定式化する。第6章では重要なStokesの定理やGaussの定理を、第7章では有用な諸公式を説明する。第8章では実践的な観点から座標変換を解説する。第9章では物理学でのいくつかの応用を紹介する。