本書では、日本文化に馴染む福祉資源の開発を心がけている。おそらく読者の認識では、資源とは石炭や石油、それに水や森林などに限定されているであろう。社会学ではそれらを含みつつも、他者への影響力の源泉を総称して資源と見る。友だちが多い、地域社会で団体活動をしている、家族・親族の力が強いことなども、個人にとっては資産になるという発想である。この観点から、介護保険制度などの仕組を新しく作り直し、同時に福祉に有効な人間関係の側面からの社会資源も導入することが肝要になってくる。本書は、二一世紀の日本社会における代表的な福祉資源と想定できる介護保険、家族、サービス組織、地域社会、企業を取り上げて、現状を踏まえて比較社会論に留意しつつ具体的に議論を展開したものとなっている。