歯科医院で働く二十歳の姉と、自動車修理工場で働く十七歳の弟。父の死、母の出奔により別々に育った姉弟が十年ぶりに再会したその年、北国は百日紅の咲かない寒い夏を迎えていた。怪しげな商事会社の暗躍、それぞれのどうにもならない愛情問題、お互いの心の奥底の欲求…育まれた悲劇の芽は次第に大きく育ち、巨木となって二人に襲いかかった。北国の姉弟の悲しい運命を静かに描き上げる三浦文学の新しい結晶。