ナイフで削いだようにざっくりとこけた頬に翳を溜めた、背の高い少年。口数少なく、教室の片隅で息をひそめていた男。…開高健十七歳の肖像描写にはじまるこの物語は、ひとりの作家の才能の萌芽生成、野心と焦燥を臨場感あふれる文体でえがきだして過不足ない。ファン待望の力作評伝である。