• Authorマイケル・ルイス 渡会圭子 阿部重夫
  • Publisher文藝春秋
  • ISBN9784163906836
  • Publish Date2017年7月

かくて行動経済学は生まれり

データ分析を武器に、貧乏球団を常勝軍団に作り変えた

オークランド・アスレチックスGMを描いた『マネー・ボール』は、

スポーツ界やビジネス界に「データ革命」を巻き起こした。



刊行後、同書には数多くの反響が寄せられたが、

その中である1つの批判的な書評が著者の目に止まった。



「専門家の判断がなぜ彼らの頭の中で歪められてしまうのか。

それは何年も前に2人の心理学者によって既に説明されている。

それをこの著者は知らないのか」



この指摘に衝撃を受けたマイケル・ルイスは、

その2人のユダヤ人心理学者、ダニエル・カーネマンと

エイモス・トヴェルスキーの足跡を追いはじめた――。



〈目次〉



■序 章 見落としていた物語

野球界にはびこるさまざまなバイアスと、それを逆手にとった貧乏球団のGM

を描いた『マネー・ボール』。その刊行後、わたしはある批判的な書評を目にし

た。「著者は、野球選手の市場がなぜ非効率的なのか、もっと深い理由がある

ことを知らないようだ」。その記事には2人の心理学者の名前が挙げられていた。



■第1章 専門家はなぜ判断を誤るのか?

あるNBAチームのGMは、スカウトの直感に不信感を抱いていた。彼らは自

分にとって都合の良い証拠ばかりを集める「確証バイアス」に陥っていたのだ。

彼らの頭の中では、いったい何が起きているのか。それは、かつてダニエル・

カーネマンとエイモス・トヴェルスキーが直面し、解き明かした問題だった。



■第2章 ダニエル・カーネマンは信用しない

ナチスからの過酷な逃亡生活を経たダニエルは、終戦後、独立戦争さなかのイ

スラエルに向かった。戦争中の体験から「人の頭の中」に強い興味を抱いた彼

は、軍の心理学部隊に配属される。そこで課せられたのは、国家の軍事力を高

めるべく、新人兵士の適性を正確に見抜く方法を作成せよという難問だった。



■第3章 エイモス・トヴェルスキーは発見する

高校卒業後、イスラエル軍の落下傘部隊に志願したエイモス。闘士として戦場

を駆け回った彼は、創設直後のヘブライ大学心理学部に入学する。「CよりB、

BよりAが好きな人は、必ずCよりAが好き」という人間像を前提とした既存

の経済理論に疑問を持った彼は、刑務所の囚人を集めてある実験を行なった。



■第4章 無意識の世界を可視化する

人間の脳は無意識のうちにどんな働きをしているのか。その研

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