学徒出身の海軍少尉吉田満を乗せた「大和」が沈んだのは昭和20年4月7日午後二時二十三分であった。奇跡的に生還した吉田は日本銀行のエリート行員として日本経済の中枢で戦後を送る。しかし、高度成長を謳歌し、そのなかで浮かれるには、彼はあまりに真摯に過ぎた。山野に散り、深海に沈んだ多くの若者たちが死の前に遺した願いと誠実に向かい合ったひとりの男の見事な人生が、ここにある。