春の御前山で思いがけず出会った、薄紅に咲きさかるカタクリの大群落。
あまりの小ささに草地に身を伏せて、ようやく所在を確かめた早池峰のチシマコザクラ。
レブンソウとの新しい出会いに、自分の命がその花に添って伸びひろがってゆくのを感じる――
山と花をこよなく愛し、日本中の山々を踏破した著者が、その豊富な山行の中から、四季折々の山と花の結びつきを100選び、歴史や自身の思い出とともに綴った珠玉のエッセイ。第32回読売文学賞〈随筆・紀行賞〉受賞作。
1980年に刊行以来、多くの山好き・花好きの間で読み継がれてきたロングセラー。NHK衛星第2TVで放映された「NHK 花の百名山」、山と溪谷社刊行「花の百名山 登山ガイド」などを生み出すことになった、元祖である。
「あれらの山々にはどんな木が茂り、どんな水が流れ、どんな花々が咲いているのか」という思いで、生涯山に登り、花を愛しつづけた著者のひたむきさ、純粋さ、喜びが、文章の端々から伝わってくる名作が、活字を大きくして待望の復刊。
表紙画・熊谷守一 「松虫草」(1961年)
解説・平尾隆弘(初代担当者・神戸外国語大学客員教授)