大和和紀さんの解説で、新たに息を踏み返した田辺聖子さんの幻の歴史エッセイ集です!
いまはなくなってしまった雑誌「文藝春秋デラックス」に連載されたものを本にまとめた作品。
スサノオからはじまり、卑弥呼、持統天皇、小野小町、紫式部、後白河院、淀君、北政所、西鶴、芭蕉、一茶、歌麿、一葉、桂春団治ら田辺さんの好きな歴史上の人物を紹介。半分エッセイで半分小説。紹介される人物は生き生きと動きだし、まるですぐそこで会って話したことがあるように描かれている。
田辺作品らしく考証もしっかりしていて、かわいげのある心憎いばかり人物を生き生きと描いているので、楽しみながら、安心して、歴史上の人物と交遊できる。
「戦後三十年たってみれば、若者は日本の歴史や、古往の人物について、全くなんの愛着も関心も持たないではないか。彼らにあっては母国の歴史は、教科書の中の無味乾燥で煩はん瑣さ な、受験用知識にすぎないのだ。私は、それらをみて胸が痛む。古い代に生きて戦い、恋し、苦しみ、死んだ愛すべき人々が、いまの若者たちの心になんの感動をおこすことなく、打ち忘れられ、かかわりをもたず、歴史に埋没してゆくのを悲しむ。受験用知識の、かわいた記号のきれっぱしとなった人々を惜しむ」(あとがき)
歴史上の人物を通して、若い人たちが、彼ら彼女たちが生きた時代や、ほかの時代の歴史へと興味をつないでいってもらえるような内容となっています。