ポルトガル植民地権力と闘い、1975年に独立を果たしたモザンビークの人びと。その脱植民地化の道程は、東西冷戦下の国際関係において「ナショナルな統一」の成功例として世界の大きな注目を集めた。しかし、1977年に勃発し16年間におよんだ反政府ゲリラとの紛争では、死者100万人、国内外難民が数百万人という未曾有の苦難を生む。現代モザンビーク政治に暗い影を落とすこの社会的分断はなぜ生まれたのか。地域社会に生きる人びととその歴史や社会構造、ポスト冷戦期の国際政治にも目を配り、複層的視点で解明を試みる。