一銭五厘のハガキに召集され、横丁の兄ちゃんたちが出征する。ドブ板踏んで、ラッパの響きに送られて…。桑原甲子雄のカメラに収められた留守家族たちの写真を唯一の手がかりに、昭和50年東京下町をルポライター児玉隆也はひたすら歩く。将来を嘱望されながら夭折した児玉が再現した、天皇から一番遠くに住んだ人たちの戦中戦後の物語。日本エッセイスト・クラブ賞受賞。