本書の主人公である望月かずは、実在した日本人女性である。東京の高円寺生まれながら、父親についての記憶はなく、母親も満州で死に、わずか六歳で孤児になった。そればかりか、母の遺産も家も何もかもを現地の人間に略奪されてしまい、自分の身さえ売られたという苦しい体験を持つ。この孤児を抱いたことがきっかけで、かずさんは五十六歳という短すぎる生涯に百三十三人もの孤児を、韓国の地で育て上げた。お金がない生活の中で、習い覚えた理髪業などで生計を立てた。それでも子どもたちの養育費が不足した時には、病院に行って自身の血液を売りながら、子どもたちを育てた。韓国の孤児を育て、オンマと呼ばれた日本人女性。その想像を絶する生涯をたどる真実の物語。日韓の秘話を『白磁の人』の著者がはじめて壮大なスケールで描く巨篇。