酷くなる一方の息子の家庭内暴力に、このままでは妻が殺されると感じていた町野は、ふと頭に浮かんだ自分の発想に慄然とした。だが、その息子はある日、何者かに轢殺されてしまった。急いで警察に駆けつけた町野は、遺品の中に黒ずんだ櫟細工の瓢箪を発見し、目頭を熱くした。昔、高山へ家族旅行に出かけた時、息子に買い与えたものだったのだ。町野の心に、轢き逃げ犯人に対する激しい怒りが湧き上がった…。