島送りの罪人を乗せ夜の川を下る高瀬舟。しかし実の弟を殺したその男の顔は晴れやかに、月を仰ぐ目は輝いていた。なぜ…。精美な日本語で鴎外で描く人間の不可思議。これは安楽死をめぐる永遠の矛盾として現代人の中にも生きている。表題作の他「阿部一族」「山椒大夫」「寒山拾得」など後期の代表作を収録。