漆黒の闇に明滅するひそやかな人生絵図。藤沢作品初期の短篇を彩るその独自の色調は読者を魅了してやまない。酔いどれの叩き大工の哀歓をえがく「父と呼べ」、島送りの過去をもつだんまり老人と娘とのほのかな交流をえがく「入墨」、そして闇の世渡りに背を押されるように墜ちてゆく男たちの宿命をえがく表題作ほか二篇を収録。