カンブリア紀の海で三葉虫をはじめとする奇妙奇天烈な動物たちが一斉に産声を上げたのは、今から5億年前のこと。地球における生命史40億年の中で、「最近の5億年」については、調査・研究が進み、これまでよく語られてきた。本書は、「世界で屈指」と称えられる古生物学者である著者が、あえて「空白」期間である今から5億年以前、「最初の30余億年」に的を絞り、最新の発見と成果に、さまざまな証拠の真偽をめぐる議論もまじえて、その進化の様子をスケッチしたものである。北極海の孤島からオーストラリアの奥地まで、世界各地の調査地に赴く著者ならではの、生き生きとした探検記録でもある。「最初の30億年」における地球環境の激変と多様な生命の進化は、それ以降にもまして、魅力的なドラマとなっている。さらに、火星での生命の謎に取り組む古生物学者の姿も活写される。