仕事場から見える「新宿」は、不気味だ。地下鉄駅に佇む「夕子」。蛇をポケットにしのばせる詩人。スピーカーを背中にしょって説教する男。そしてぬめぬめの「新宿シルクロード」を酒場に向かって無気力に旅する男たち-。「新宿」という街は、それら孤独や喧噪や疲労をものみ込んで、また立派な朝を迎えていく。虚実の間を鋭くかつ緩やかに描く現代の「都会の憂鬱」。椎名文学の一つの核ともいえる異色小説。