時は平安。京の都から遠く離れた大江山。この山に、いつしか鬼や流民が集結し、京の朝廷をも震えあがらせる盗賊の集団がいた。その首領こそ酒呑童子。戸倉聖の平安時代の姿である。-酒呑童子は悩んでいた。自分が、仲間たちとちょっと違うのである。成長しないのだ。そんな時、迷い込んだ京の逢魔が辻で、酒呑童子が出逢った陰陽師が、天才と呼ばれた安倍晴明であった。運命の歯車は、そこから変わっていくのだが-。表題作「鳴弦の月」と、"オサキ"というかわいいつき物を操る青年を扱った傑作短編「蠱持ち」を掲載。