30年続いた鹿間四重奏団は、最高のメンバーで円熟期という名の終焉を迎えていた。静かな包容力でカルテットを支えるチェロの伊井山。奔放な紅一点・ビオラの遼子。妖しげな美貌を誇るセカンドバイオリン文字相馬。老いてなお、禍々しいまでのエネルギーに満ちるファーストバイオリン鹿間五郎-。その鹿間四重奏団最後の日。違う場所、交わることのない世界でそれぞれの日々を生きる人々が、同じホールに向かう。ばらばらに生きる人々の人生が鹿間カルテットの音楽という横糸を得て、繊細なレース模様のような物語を紡ぎだす。胸をうつ語りと調べに彩られた、人生模様。