著者は長いこと旅の映画にひかれてきた。そしていつか「映画の旅」について調べたいと思い、本書に取り組んだ。そして焦点は作品や上映の歴史よりも、観客の視線と記憶、映像と体験との交わりに移っていった。ブラジルへ旅した日本映画は、いかにして日系移民の揺れるアイデンティテイに触れたのか、彼らの望郷を誘い、またいやしたのか。そもそも故郷とは何か。本書は映画から見た日系人の文化史・心性史である。