本書は、フランスの大革命期が大ナポレオンの没落によって終止符をうたれ、ルイ18世による王政復古がおこなわれた年から、1848年革命の前夜までのほぼ半世紀にわたるドイツ社会の様相を、きわめて具体的に描いた生活文化史である。20世紀末の現在、19世紀末への回顧がさまざまな分野で盛んになっているが、19世紀末にはビーダーマイヤー時代の中心となる1830年代(ロマンチック時代)への郷愁が見うけられる。ベーンは、当時のドイツ社会にみなぎっていた「古き良き」ビーダーマイヤー時代への追慕の気持を敏感にとらえ、きわめて具体的な事例をあげてこの複雑な時代の世相を浮かびあがらせている。