慶長十九年。この年、七十三歳の家康は悩んでいた。竹千代か、国千代か?秀忠の跡を継がせるのは、暗愚の兄か、聡明な弟か?懊悩の末、家康が出した選定方法-。それは、おのれの命の落日が近い焦燥からか、あまりに奇想天外であった。峠ひとつ隔てて対峙する先祖代々の宿敵、甲賀と伊賀。この両派から精鋭十人を選び、代理として戦わせるという。家康の厳命のもと、手網を解かれた猟犬のごとく敵に突進する忍者たち。秘術の限りを尽くして繰り広げられる地獄絵巻。凄絶な死闘の果てに漂う哀しい慕情。風太郎忍法帖の記念碑的傑作。