鬱病の夫の看病をしつづけて先に逝った老妻の姿を描き、著者の亡姉への切々たる思いがあふれる「白萩」。荒畑寒村翁の晩年の魂が放つ無垢の輝き「告別式」。愛の傷手を負って異国の地を旅する男と女の不幸を酷熱の砂漠の中に交錯させた「風のない日々」など-。人の世の深淵を見つめ、人間の哀歓を愛惜をこめて描く久久の短編集。最新作12編。