1989年4月、モントリオール。ゴチック様式の教会の尖塔に刺される形で殺害された日本人留学生、立原まゆみ。事件は、女性を誘拐し避雷針に突き刺すという連続殺人犯ダニエルの犯した猟奇事件のひとつとして処理された。それから十年…。当時の留学生仲間に同窓会を兼ねたライブの招待状が届いた。モントリオールのマッギネス大学には六人の日本人留学生がいた。それぞれが、過去の忌まわしい記憶を払拭してライブ会場に赴いたとき、新たなダニエルの魔の手が迫る。留学生仲間の森久美子がライブ会場で血を吐いて奇妙な死をとげる。若き大学講師、湯川幸四郎は否応もなく事件の渦中に巻き込まれてゆくが…。科学論で世界を築いた著者がはじめて挑む理系本格ミステリー。