本書は人間の行為とコミュニケーションに関して今日の人工知能研究において想定されている支配的な前提への痛烈な批判の書である。著者は、人と機械のインタラクション(相互作用)に関して、人工知能研究が想定している「プラン(計画)」のモデルは、人間の社会的行為が「状況に埋め込まれている」という特性を考慮していないため、必ずどこかで破綻する運命にあるという。そのことを、本書では、人工知能の機能を取り入れた「かしこい」コピー機が、初歩のユーザーとの「コミュニケーション」に失敗し破綻を来すプロセスを詳細な「会話分析」を通して明らかにする。本書はハイテク社会における人間と機械とのコミュニケーションについて、日常的会話に関するエスノメソドロジー研究をベースにして徹底的に分析し、その可能性と限界を明らかにしている。