たとえばコレラ菌は、子孫を残すためにコレラという病気を起こす。コレラ患者の身体は、コレラ菌にとって最適な生存環境だからである。けれども患者の死は、環境そのものの破壊を意味し、コレラ菌にとっても不都合なことになる。ではコレラ菌は、どうやって生き延びるのだろうか。ジフテリア菌や破傷風菌、結核菌からB型肝炎ウイルス、エイズウイルスなどが繰り広げるミクロな世界の生存競争を眺めながら、病気と病原体の自己保存との関係について考える。