明治維新の成就は薩長両藩の力に負うところが大きかったが、朝廷の呼応なくしては実現しなかった。ことに下級公家ながら、混迷の朝廷に異才をもって頭角を現わし、姦物と称され、のちに鉄の意志の人と評価された岩倉具視の存在は絶対不可欠であった。「王政復古」を視座に据え、明治政府樹立後も朝廷の権威確立と維持につとめ、近代日本の方向決定に重大な役割を果たした巨人の行動の軌跡をたどり、その歴史的意義を検証する。