近くの書店で在庫を調べる
  • 著者村山由佳
  • 出版社講談社
  • LBRZs829wq395l
  • 発行2006年10月

永遠。 (2)

生きることに無器用なひとなのね、それが私にはいとしかった――葉月さんは亡くなる前、娘の弥生と幼なじみの僕に話してくれた。かつて別れた恋人のことを。弥生はその男の向かいの部屋に住み、彼の講義を聴きに短大に通った。「お父さん」と、一度も告げられずに。卒業式の日、僕は弥生の帰りを待つ――。(講談社文庫)
別れるしかなかった。ふたたび逢うこともなかった。
言葉にすると、想いはこぼれおちてしまう。
いつまでも心にのこる青春小説。
生きることに無器用なひとなのね、それが私にはいとしかった――葉月さんは亡くなる前、娘の弥生と幼なじみの僕に話してくれた。かつて別れた恋人のことを。弥生はその男の向かいの部屋に住み、彼の講義を聴きに短大に通った。「お父さん」と、一度も告げられずに。卒業式の日、僕は弥生の帰りを待つ――。
その時ねえ。私、初めてあのひとがわかった気がした。何にも言わないから鈍いみたいに見えるけど、本当は逆なんだ。思ったことをなかなか口にしてくれないのは、言葉にするとこぼれてしまうものがたくさんあるってことを、よく知っているからなんだな、ってね。ねえ、弥生。あんたもこの先、誰かを好きになるかもしれない。そういう時に、その恋がほんものかどうか、見分ける方法がひとつあるよ。――<本文より>

>> 続きを表示