■他者(他家)の相続を支配する者が権力の基盤をつくってきた
生前退位が話題になっている天皇位。もともとは兄弟継承が基本ルールだったが、弟を無視して直系の子孫に継がせようとする動きが生まれることで壬申の乱のような争乱が続発し始める。そこに摂関家などの介入が始まり、天皇の外戚として権力を振るう公家や武家が台頭してくる。
皇位をめぐる最大の争いとなった南北朝が、新たな武家の権力闘争の時代をもたらす。そこで台頭した足利将軍家は、大名家の相続への介入によって、その基盤を強固なものとしていった。
■相続支配の集大成が江戸幕府
そして江戸時代、徳川幕府は、「朱印状」という所領の保証を、大名だけでなく公家や寺社にも広げ、その相続の決定権もすべて握ることで盤石な支配体制を確立する。この朱印状は、将軍が替わるたびに発行されていた。
また、相続に果たしてきた女性の役割も無視することはできない。古くは女性天皇の存在が時の権力者を生み出し、武家社会では、女城主・直虎のように大名家の家督を相続、あるいは、当主の後家という立場で相続の決定権を握り、跡目相続において大きな役割を果たした女性も存在している。
■人気の歴史研究家が相続をキーワードに読み解く日本の権力闘争史
古今東西を問わず、相続を巡る争いが歴史を動かしてきた。天皇・摂関家、将軍家、大名家における相続争いは、その象徴と言える。本書は、歴史研究者として定評ある筆者が、古代から江戸時代まで、象徴的な事例を挙げながら、権力の基盤と相続争いをキーワードに日本史を読み解くもの。