• 著者菊地秀行
  • 出版社徳間書店
  • ISBN9784191533974
  • 発行1987年2月

妖山鬼

初秋の日射しの中で惨劇は起った。長野県境にある山中の茶店で、主人夫婦が殺されたのである。鞘も鍔もない抜き身の日本刀で、一刀のもとに首を切断されたのだ。しかも、おぞましいことに、すでに土気色に変った妻の生首を引き寄せ、二つの切り口をぴたりと重ね合われた犯人が、死者の肉体をなぶり始めると、とっくに息絶えていなければならぬ妻の眼が、どろりと開いた。たくましい下肢に白いパンティのナイロンが食い込んでいる。両脚を小脇に抱え、犯人は突き入れた。妻が-、いや、女の首がひい、と泣いた…。

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