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  • 著者クラウス・メルツ 松下たえ子
  • 出版社白水社
  • ISBN9784560090527
  • 発行2017年8月

至福の烙印

家族の物語が映し出す生の厳しさと明るさ
 スイスの片田舎に暮らす一家の変わりばえしない日常を描きながら、彫琢を重ねた詩的な言葉、暗示、省略を特徴とする圧縮された表現によって、広大な文学世界へと繋がる作品を書き継いできたクラウス・メルツ。マックス・フリッシュ、フリードリヒ・デュレンマット亡きあとの現代スイス文学を代表する作家による珠玉の3篇。
「ヤーコプは眠っている 本来なら長篇小説」
 1950年代後半から60年代初頭のスイスの村に暮らすある家族の日々が、50代の「私」と子供の日の「ぼく」の眼差しの往還を通して語られる。
「ペーター・ターラーの失踪 物語」
 語り手がペーター・ターラーの失踪から死までの道のりを、ターラーの視点とターラーが母の死を綴った手記を交えて辿る異色作。
「アルゼンチン人 短篇小説」
 同窓会に出席した語り手「私」が、レナという元同級生から彼女の祖父にまつわる話を聞く。二人が卒業した学校の教員だった祖父は、「アルゼンチン人」と呼ばれていた。レナが語り、それを「私」が語り直す「アルゼンチン人」の物語と並行して、レナと「私」の恋というもうひとつの物語が始まる。

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