人皆直行、我独横行-「人のまねはするな」という祖父の言葉を胸に、著者は三十二歳で書壇を退き、「詩書画三絶」の境地へ独自の道を切り開く。「草庵」と呼ぶ緑濃い居宅で、「樹」や「土」など愛する字を書き続けて半世紀。市井の人の拙い文字に心揺さぶられ、洒脱な良寛や仙〓(がい)の書と絵に酔う。飄々とした中に揺るぎない自我と深い教養が滲む「莫山先生」最晩年の絶品エッセイ。