彼女は『眠り姫』と呼ばれていた。成績優秀で美人だった彼女の唯一の欠点である"居眠り"癖を、同級生たちがからかい半分で付けた渾名だ。そのことに拗ねる彼女の顔がまた可愛らしく、私はさらに「姫、姫」と意地悪をした。そんなたわいもない、しかし幸せな日常を私は楽しんでいた。そして、彼女との日々がいつまでも続くものと思っていた-。彼女が、本当に『眠り姫』になってしまうまでは…。あまりにも静謐な純愛を描いた表題作ほかバリエーション豊かな作品を収録!大賞受賞作家・貴子潤一郎の珠玉の短編集登場。