なぜガリマールをとりあげたのか、かれがユニークで例外的な人物だったからだ。20世紀初頭の10年間に出版活動に身を投じた人々の中で、ガリマールは生涯の終りにあたって、自社の部厚いカタログをひもときながら、フランス文学、それは私だということができた唯一の人物であったことはたしかだ。本書はこの重要でありながらよく知られていない人物について書かれた最初の伝記である。また半世紀にわたるフランスの出版活動についての専門研究でもある。ガストン・ガリマールの生涯という心をそそられる謎の探求の成果である本書は、歴史的な客観性というよりも、知的誠実さをめざしている。目的はただ一つ、ガストン・ガリマールはいかにしてガストン・ガリマールになったか、という問いに答えることであった。