文政四年十一月のある夜、屋台ずしを営む華屋与兵衛は、主殺しの下手人にされた呉服問屋の手代・房吉を一時匿った。だが、助けてほしいという願いは拒絶。与兵衛には、人には言えない過去があったのだ。直後、房吉は土左衛門に、その許嫁も身投げした。与兵衛は真相究明を己に課すが…。過去を捨て、町人として生きる男の覚悟と苦悩、成長を描く時代推理の意欲作。書下ろし。