本書の対象時期はドイツ第二帝政の後半、1888年以降のいわゆるヴィルヘルム時代から1990年のドイツ統一までの近代末から現代までのほぼ1世紀に当たる。この間のドイツは、国制だけをとっても、帝政、軍事独裁、ヴァイマル民主制、ナチズム、冷戦期の分裂国家のなかで西ドイツの西欧的議会民主主義と東ドイツのソ連型人民民主主義、と近現代の政治体制の主要なものすべてをめまぐるしく経験し、国内での伝統的なライヒとラントの関係においても、緩やかな連邦制から強力な中央集権制のあいだで多様なヴァリエーションを提示してきた。ドイツ近現代史は20世紀国家の基本問題を凝集させた場であり、その意味で現代のひとつの鏡でもあるし、また国民国家の歴史と展望を考えるうえでも、貴重な参照軸であることがわかる。本書では、歴史研究における「近代」パラダイムの再考と統一ドイツの出現という内的・外的変動にたって、これまでの研究成果をもりこんだ叙述ができた。