五四巻の物語が巻数順に執筆されていないことは、何を意味するか。本書は、原作のほのかな言葉遣いから主題の展開をつかみ、『源氏物語』の成立過程、明瞭な構造を明らかにする。また、紫式部の恋愛と失意を歌集・日記から読み取り、創作との関連を鋭く見抜いて物語の奥深い世界に新たな光を当てる。この源氏理解は、読者の共鳴を呼び起こすものであろう。源氏物語千年紀に刊行する画期的源氏論。