本著は一九九七年に学位申請論文として大阪大学に提出し、同年中に受理された「ドイツ現象学的美学・芸術論の諸相と展開-フィードラー・ガイガー・オーデブレヒトを中心に-」に、その後発表した一篇を加え、全体にわたって若干の加筆・修正を施したものである。すなわち、本著第一章から第五章に相当する学位論文「ドイツ現象学的美学・芸術論の諸相と展開-フィードラー・ガイガー・オーデブレヒトを中心に-」は、具体的にはルドルフ・オーデブレヒトおよびモーリッツ・ガイガーに代表される狭義のドイツ現象学的美学思想の「諸相」を検討し、次いでコンラート・フィードラーの芸術論を広義の現象学的芸術思想として再解釈したうえで、その「展開」可能性の二方向として、マルティン・ハイデガーおよび西田幾多郎の思想を想定しようとするものである。この学位論文の内容と内的連関をもつ「芸術と現実-現代芸術をめぐる一考察-」をそこに付加したのが本著である。